【SAC】興味があったのでサコインの法的問題をリサーチしてみた。【違法?合法?】

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「サコイン」とは、インフルエンサーである迫佑樹さんが発行した独自トークンです。ブロックチェーンのSolana上で発行されており、迫さんが運営するオンラインサービス(教材販売プラットフォーム「Brain」や関連店舗)などでの利用を想定した、いわゆるコミュニティ通貨的なデジタル資産です。暗号資産取引所のBybit上で売買可能で、Solana(SOL)との交換市場も用意されています 。しかしこのサコイン、最近「1億円投資」「ステルスマーケティング」「ポンプ&ダンプ疑惑」など数々の炎上要素が噴出し、大きな問題となっています。ファンからは「応援のためのトークン」のつもりが、一部では「価値を吊り上げて売り抜けるだけの詐欺まがいスキームではないか?」との指摘も飛び交い、「法規制が入ったら終わりだ」といった不安の声まで上がる事態となりました 。

では、このサコイン問題は法律的に見るとどんな論点があるのでしょうか?初心者の方にもわかりやすく、現行の日本の法規制の枠組みの中でサコインがどう位置づけられるか、そして今後どんな展開が予想されるかを解説します。

資金決済法:無登録の「暗号資産交換業」になる?

まず注目すべきは資金決済法です。資金決済法は電子マネーや暗号資産(旧称:仮想通貨)などの取り扱いを規制する法律で、利用者保護の観点から「暗号資産交換業」を営むには金融庁への登録が必要だと定めています。暗号資産交換業とは「暗号資産の売買や交換を業として行うこと」を指し、これには暗号資産の発行者が自らトークンを販売する行為も含まれると解されています。

サコインはSolanaベースのトークンであり、不特定多数間で売買可能な点から見て法律上も「暗号資産」に該当する可能性が高いです。実際、2020年の資金決済法改正以降、トークンが暗号資産に当たる場合、その発行自体が規制対象となりました。暗号資産交換業の登録を受けた者でなければ、暗号資産の売買や交換を業として行えないこととされたため、プロジェクトがトークンを発行して資金調達する際は、発行体自身が登録を受けるか、もしくは登録業者(取引所)を介して行う必要があります。この取引所を介した形の資金調達手法はIEO(イニシャル・エクスチェンジ・オファリング)と呼ばれ、発行体単独で行うICOとの差別化が図られています。

ところがサコインは、日本で登録を受けた取引所ではなく海外取引所のBybitで取り扱われました。Bybitは日本では無登録で営業している海外暗号資産取引所であり、金融庁は以前から度々警告や規制強化を行っています。2025年2月には金融庁の働きかけによりBybitやBitgetなど大手海外取引所のアプリが日本のApp StoreやGoogle Playから一斉削除される事態にもなりました 。つまり、日本のユーザーがサコインを取引するには無登録業者のプラットフォームを使う必要がある状況であり、この点で金融庁の目を大いに引くことになったわけです。

では、肝心の迫さん(またはその運営法人)は暗号資産交換業の「無登録営業」に当たるのでしょうか? 法律上は「暗号資産の販売・交換を業として行っているかどうか」がポイントです。仮に迫さん側が一般ユーザーに対してサコインを有償で販売していたり、OTC取引(店頭取引)で仲介するような形で関与していれば、無登録で暗号資産交換業を営んだ疑いが出てきます。金融庁も2017年のICOに関する注意喚起の中で「ICOの仕組みによっては資金決済法の規制対象となり、登録なしにこうした事業を行った場合には刑事罰の対象となる」と明言しています ()。実際、無登録で暗号資産を販売したケースとしては、2021年に「ワールドフレンドシップコイン」というトークンを無許可で販売し約8.7億円を集めていた事案で元代表ら7名が資金決済法違反容疑で摘発されています。

サコインの場合、初期段階では一部ユーザーに無料配布され、後から参入した人は市場で買い集める形になっていたとも言われます 。仮に「販売」という形式を取っていなければ資金決済法違反とは直ちに言い切れない面もあります。しかし、プロモーションとして特定のインフルエンサー(おさるさん)に大量のトークンを渡し、宣伝させていたとすれば、それは経済的実質で見れば「報酬としてトークンを譲渡(販売)した」行為とも捉えられかねません。また「1億円投資した」とされるおさるさんへのトークン提供が、市場ではなく裏で行われていたならば、その取引自体が無登録の店頭ブローカー行為ともみなされる可能性があります。

要するに、サコインが暗号資産に該当する以上、その取り扱いは資金決済法の規制下にあり、適切な登録なしに販売・仲介すれば違法となるリスクがあります 。現時点で金融庁が公式発表をしているわけではありませんが、ネット上では「金融庁に通報した」「無登録の疑いが多数指摘されている」という情報も飛び交っており、当局も黙視はしないだろうとの見方が強まっています。「法規制来たら終わり」というユーザーらの声 が現実とならないか、予断を許さない状況です。

金融商品取引法:サコインは証券扱いになるのか?

次に金融商品取引法(=金商法)の観点です。金商法は株式や債券など有価証券の発行・取引を規制し、投資家を保護するための法律ですが、実は一部の投資スキームはトークンであっても「みなし有価証券」として規制対象になる可能性があります。

ポイントは、サコインが実質的に出資を募る「集団投資スキーム」かどうかです。例えば「トークン販売で資金を集め、その資金で事業を行い、トークンの価値向上という形で出資者に還元する」のであれば、それは経済的には投資信託やファンドと同じ構造です。日本ではこのような出資持分を集団投資スキーム持分と位置づけ、金商法上の有価証券として扱います。2017年当時のVALUがまさにグレーゾーンでしたが、結果的に多くのユーザーが「個人の価値をトークン化した疑似株式」とみなして投機し、ヒカル氏らによる価格操作事件で大炎上しました 。当時VALU自体は法規制の網が十分にはかかっておらず、ヒカル氏らも法的処罰は受けませんでした(法的にはグレーでした) 。しかしこの事件を契機に、「仮想通貨であっても実質的な出資なら規制すべきだ」という問題提起がなされ、2019年の金商法改正でその穴をふさぐ措置が取られています 。

具体的には、これまで金銭での出資にのみ適用されていたファンド規制を、暗号資産での出資にも拡大しました。改正後は「顧客が金銭に代えて暗号資産で出資するケース」も集団投資スキーム持分として金商法の規制対象となり、第二種金融商品取引業の登録なしに募集・販売すれば違法となります。簡単に言えば、「お金じゃなくコインを集めたから法律関係ないでしょ?」はもう通用しないということです。

ではサコインはこの集団投資スキーム(=投資ファンド)に当たるのでしょうか? 表向き、サコインは先述のように「サービス内通貨」「コミュニティトークン」という位置づけで、ホワイトペーパー等でも「応援や共感を形にした新しいお金」と説明されています。トークン保有者に対し法定通貨建ての配当や権利を約束するものではなく、持っているだけで自動的に儲かるとは歌っていません。従って形式上は、有価証券的な「権利」の発行ではないとも言えます。

しかし、実質はどうかという点が問われます。仮にサコインの販売で集めた資金(または創設者が保有する大量のサコインの価値)を原資に、迫さんが様々な事業展開を行い、その成功如何でサコインの相場が上下するのであれば、投資家は「迫さんの事業の成功に賭けてトークンを買っている」と評価できます。これは経済的には株式やファンド出資と同じ発想ですよね。金商法はスキームの実態で判断するので、「法律上権利を与えていないからセーフ」とは限りません 。先述の金融庁ICO注意喚起でも、「ICOが投資としての性格を持つ場合、仮想通貨で購入しても実質的に法定通貨での購入と同視されるスキームについては、金商法の規制対象となる」とされています 。要するに「トークンを使ってるけど、やってることは投資募集と同じだよね」というケースは有価証券と見なしますよ、ということです。

この観点でサコインを見ると、もし運営側がサコイン販売で得た収益を元手に事業拡大を図り「トークンエコノミー」を成長させる計画なのであれば、集団投資スキーム持分として第二種金融商品取引業の無登録営業に問われるリスクがあります。実際、暗号資産による無登録の出資勧誘を行っていたグループが金融商品取引法違反(無登録業)で逮捕された例もあります(高配当を謳いビットコインで出資を募っていた事件で、関与者7人が2021年に検挙されています 。金商法違反となれば5年以下の懲役または500万円以下の罰金(法人は5億円以下の罰金)という重い刑事罰も規定されています。

もっとも、サコイン側もまったく手をこまねいているわけではないでしょう。先述のVALU事件を踏まえ、「法的にグレーな部分には踏み込まないよう注意して運営している」可能性があります 。たとえば「サコイン保有者への経済的リターンは約束しない」「あくまでファン活動の延長」という位置づけを崩さないよう慎重に言及しているかもしれません。実際、炎上当初から迫さんは「VALUの二の舞になるような浅はかなことはしない」と発信し、支持者も「これはあくまで効率的な成長戦略だ」「推し活の一環だ」と強調しています。現在のところ幸い大きな損失を被った参加者も出ていないため、本格的な紛争には至っていません 。

しかし裏を返せば、一歩間違えばVALU同様に集団投資スキームと見做される可能性があるということでもあります。もしサコインの価値が急落し、後から高値で買った人々が「話が違う」「騙された」と感じれば、一気に金商法違反や詐欺罪での追及の声が高まりかねません。その際に「これは有価証券ではない」と言い張るには、現状はやや心許ないグレーな部分が残っているのも事実です。

その他の関連法規:広告・消費者保護・詐欺の視点

サコイン問題には、金融法以外にもいくつか法的論点があります。ここでは広告規制や消費者保護、詐欺罪といった観点から考えてみましょう。

景品表示法とステルスマーケティング

今回の炎上の発端として、YouTuberのおさるさんによる「サコインに1億円投資しました!」という宣伝がありました 。後になってこの宣伝が事前に依頼されたプロモーション(いわゆるステマ疑惑)であった可能性が指摘されています。もし本当に広告であることを隠して宣伝していたなら、これは景品表示法に違反するおそれがあります。

景品表示法は、消費者を誤認させる表示や広告を禁じる法律です。2023年10月からは特に「ステルスマーケティング」が明確に規制対象に加わり、「広告であるにもかかわらず広告であることを隠す表示」は不当表示として違法とされました 。今回のケースで言えば、仮におさるさんが迫さん側から金銭やトークンの提供を受けていながら、その事実を開示せず自分の意思で投資したかのように装っていた場合、まさにこのステマ規制に引っかかります。景品表示法上、処罰の対象となるのは広告主(事業者)であり、依頼を受けたインフルエンサー本人は直接の処罰対象にはなりません。つまりこの場合、迫さん側(サコイン運営側)が行政処分の矢面に立つことになります。

景品表示法違反に対しては、消費者庁からの差止め命令や公表措置が行われ、従わない悪質な場合は2年以下の懲役または300万円以下の罰金といった刑事罰も科され得ます。企業イメージの失墜も甚大です。サコインに関しては、広告か否か曖昧なおさるさんの投稿以外にも、「必ず儲かる」「市場に出せば◯倍になる」といった文言で参加者を煽っていたとすれば、それも誇大広告(優良誤認表示)として問題視されるでしょう。事実、「高い将来性」「ローリスクでリターン」などと謳って出資を募る暗号資産ICO案件は後を絶たず、そうした宣伝に乗せられて被害に遭うケースも報告されています。サコイン運営側がどこまで関与していたかは不明ですが、少なくとも今回の騒動で「インフルエンサー広告の透明性」は強く問われることになりました。

消費者保護(説明義務・契約の問題)

サコインのような新しい形態のトークン販売では、法律のグレーを突いて利用者(購入者)への説明不足が起こりがちです。本来、金融商品であればリスクや仕組みについてしっかり説明する義務がありますが、サコインは「金融商品ではない」という建前なので詳細な開示資料(目論見書など)はありません。それでも一般消費者から見れば実質的に「出資」「投資」に感じられる面もあり、情報の非対称性が大きいことは否めません。

例えば消費者契約法では、事業者が重要な事実を告げなかったり、事実と異なることを告げて消費者に契約(購入)させた場合、消費者は契約を取り消すことができます。サコインについて「流動性が十分にある」「必ず将来使い道が増える」といった説明がもし誤解を招くものであれば、購入者は後から契約無効を主張できる可能性があります。また、特定商取引法などではネット上での投資商品の勧誘にも一定の規制があります。もっとも現状サコインは「投資商品」と位置づけられていないため、直接適用は難しいかもしれません。しかし利用者保護の観点からは、運営側には道義的にもしっかりリスクや仕組みを説明する責任があると言えるでしょう。今回の件では「換金が難しいリスク」「価格変動の可能性」について十分周知されていなかったとの批判もあり、こうした透明性の欠如自体が社会問題となっています。

詐欺罪の可能性

最終手段的に問題となるのが刑法上の詐欺罪です。詐欺罪は「人を騙して財物を交付させる」行為を処罰するもので、もしサコイン運営が最初から出資金を騙し取る意図で計画されたペテンだった場合、刑事事件に発展する可能性もあります。

例えば、実態のないプロジェクトなのに「将来有望」と装って資金集めだけ行いトークンが暴落…という筋書きであれば明確に詐欺に当たるでしょう ()。幸いサコインは一応使い道(迫さん関連サービスでの利用)も提示されていますし、今のところ運営が雲隠れしたわけではありません。ただ、典型的なポンプ・アンド・ダンプ(価格操作型詐欺)との指摘はあります。もし運営や一部関係者が裏で価格を吊り上げるための取引をしていたり、出来高や価格を人為的に操作して一般参加者を誤誘導していたのであれば、悪質性が高いです。大阪府警が2021年に摘発した事例では、実質無価値な独自コインへの投資話を持ちかけて暗号資産(仮想通貨)などをだまし取ったとして、関係者6人を詐欺容疑で逮捕しています。サコインについても、「取引の数値を弄っているのでは」との疑念や、「最終的に誰かが売り抜けて損をかぶるのは一般参加者では」との懸念が出ています。

もっとも、詐欺罪で立件するハードルは決して低くありません。立証のためには「最初から人を欺いて利益を得ようとする意思」があったことを証明する必要があります。仮に価値が下がって参加者が損をしても、「事業が思ったようにいかなかっただけ」であれば直ちに詐欺とは言えないのです。VALU事件でも「計画的な価格操作だったのでは」と批判されましたが、刑事事件にはなりませんでした。ただし、プロジェクトが崩壊し被害届が相次げば捜査当局も動かざるを得なくなるでしょう。運営側がどこまで誠実に対応するかが、詐欺的かどうかの評価を分けることになりそうです。

金融庁など規制当局の対応は?

では、このサコイン騒動に対し、金融庁や警察など規制当局は現時点で何か動きを見せているのでしょうか。

公式なコメントや発表は、2025年3月時点では出ていません。 しかし前述のように、多くの関係者や有志が金融庁や消費者庁に情報提供や相談を行っている模様で、当局も事態を把握していると考えられます。金融庁は「無登録業者との取引は高リスクで違法」とたびたび注意喚起しており、実際違法の疑いが強まれば調査に乗り出すでしょう。暗号資産に関する規制違反は近年次々と摘発例が出ている分野です。たとえば2021年には警視庁が暗号資産での巨額出資スキームを摘発し、同年には金融庁が無登録で国内投資家を勧誘していた海外取引所(BybitやBinanceなど)に警告を発出しています。また、先に触れたように2025年2月には海外取引所アプリのストア削除という踏み込んだ対応も行われました。

過去のVALU事件では結果的に法律の不備で処罰はされませんでしたが、金融庁はその後の法改正で対応しました。つまり「問題が起きたら規制を強化する」という姿勢がうかがえます。サコインについても、仮に資金決済法や金商法違反の疑いが濃厚になれば、金融庁はまず発行元に事実関係の確認や是正措置を求め、その内容次第では警察等と連携して強制調査に踏み切る可能性もあります。特に利用者保護の観点が強い案件ですので、消費者庁や警視庁のサイバー犯罪担当なども含めたマルチな対応が取られるかもしれません。

一方で、当局としても慎重さが求められるケースではあります。というのも、サコインは一応「コミュニティ内通貨」という建付けで、直ちに既存のどの法律にも明確に違反していると断定しづらい側面があります。下手に動いて「せっかくの新しい経済圏を潰すのか」という批判が出ることも避けたいでしょう。現状、当局はまず情報収集と法的論点の整理を進めている段階ではないかと推測されます。その上で明確な違法行為(無登録営業や不当表示など)が確認されれば然るべき措置…という流れになるでしょう。

ユーザーとしては、「公式な動きがない=問題ない」では決してなく、水面下で監視の目が光っていると考えておくべきです。金融庁も「規制対象となる場合には登録など義務を適切に履行する必要がある」と強調しており、今回は世間の注目も高い案件ですから、事業者側の出方次第では表沙汰になる可能性があります。

サコイン問題が今後の規制をどう変える? – 将来展望

最後に、今回のサコイン騒動が日本の暗号資産規制の今後にどんな影響を与えるか考えてみます。

規制強化と抜け道封じ

まず考えられるのは、現行ルールの厳格な適用と、必要に応じた規制強化です。すでに資金決済法・金融商品取引法という二本柱で法律のフレームワーク自体は整備されていますが、サコインのような事例はそのグレーの部分を突いたケースとも言えます。もし当局が「現行法では十分対応できない」と判断すれば、新たなガイドライン策定や法改正の議論につながるでしょう。

例えば、「個人トークン」や「コミュニティトークン」に関する明確なルール作りは今後の論点かもしれません。現状では、それが決済手段的に使われれば暗号資産、投資性が強ければ有価証券、とケースバイケースで判断するしかなく、事前に「これは合法/違法」と線引きが難しい状況です。サコイン騒動で顕在化した問題点(ステマの横行、流動性不足によるリスク、創業者による価格コントロールの懸念など)を踏まえ、金融庁が業界団体などと協議して自主規制ルールを設ける可能性もあります。たとえば「発行者はホワイトペーパーでトークンの用途・リスクを開示すること」「一定規模以上のトークン発行は事前に金融庁に届出させる」といった仕組みが考えられるでしょう。

また、既存の規制の抜け道を塞ぐ運用も進むでしょう。前述のように、2020年改正でICOは事実上IEOでしかできなくなりましたが、今回のように海外取引所を利用されると国内規制が及びにくくなります。ここをカバーするため、海外業者へのアクセス遮断や罰則強化といった手段も議論されるかもしれません(実際、海外取引所アプリ削除はその一環と言えます)。最終的には「日本居住者向けに事実上販売するなら海外であっても日本法を守らせる」という方向に向かう可能性があります。

投資家・市場への影響

規制が強化されれば、少なくとも「第二のサコイン」的な案件は出しづらくなるでしょう。インフルエンサーが気軽に自分のコインを発行してファンから資金調達…というモデルはハードルが上がり、やるなら金融商品取引業の免許を取るか、きちんと日本の取引所と組んでIEOにするか、といった正攻法が求められるはずです。健全なプロジェクトにとっては手間が増える反面、怪しい案件を排除できるメリットもあります。市場全体としては短期的に自由度が下がるように見えても、長期的には投資家の信頼醸成につながるでしょう。

一方で、規制強化には慎重論もあります。日本政府は近年「Web3」や「暗号資産ビジネス」を成長戦略として推進する姿勢も見せています。過度な締め付けはイノベーションの芽を摘むとの指摘もあり、バランスが重要です。そのため、ひとくちに規制強化と言っても全面禁止のような極端な話ではなく、「透明性の確保」「投資家保護策の拡充」といった方向になるでしょう。

国際的な規制アプローチとの比較

サコイン問題を考える上で、海外の動きも参考になります。アメリカでは証券取引委員会(SEC)が暗号資産に非常に厳しく、サコインのようなケースはまず未登録証券の違法販売とみなされる可能性大です。SECはICOブームの頃から「実質的に証券ならば仮想通貨でも証券法の適用を逃れられない」との立場を取り、数多くのICOプロジェクトを摘発・制裁してきました 。有名人によるトークン広告についても、SECは「報酬を開示せずにトークンを宣伝する行為は違法」だと警告し、実際にプロボクサーのフロイド・メイウェザー氏や俳優のスティーブン・セガール氏らが罰金を科せられた例もあります (SEC Warns Celebrity ICO Endorsments May Be Breaking The Law)。アメリカではこのように法律の解釈を拡張してでも投資家を保護する姿勢が強く、日本の比ではありません。

欧州連合(EU)でも、MiCA(暗号資産規制)という包括的なルールが2024年以降順次施行されます (The European regulation Markets in Crypto-Assets (MiCA) | AMF)。MiCAでは暗号資産の発行・販売・流通について統一的な枠組みを設けており、トークン発行者は必ずホワイトペーパー(白書)を作成して当局に届け出ること、不公正な市場操作は禁止、ステーブルコイン発行には資金要件を課す…など、網羅的な規制が敷かれます (The European regulation Markets in Crypto-Assets (MiCA) | AMF)。サコインのようなユーティリティトークンであっても、公募するのであれば発行者情報やプロジェクト内容を詳細に開示する義務が生じるでしょう。要は「よく分からないまま買わせない」仕組み作りが進んでいるわけです。

日本もこうした国際的潮流を無視できません。幸い、日本は世界的にも早くから暗号資産を法律で定義し取引所登録制を導入するなど進んだ面もあります。ただ、ICOやトークン発行に関しては欧米に比べると後手に回った感があり、MiCAや米国の事例は良い教訓となるでしょう。今後は日本も情報開示の徹底や市場操作規制の強化など、投資家保護の実効性を高める方向に舵を切る可能性があります。

まとめ:サコインはどこへ向かうのか

サコイン問題は、単なる一コミュニティの炎上に留まらず、新時代のお金と法律のせめぎ合いを象徴する出来事となりました。法律的には資金決済法・金商法・景表法など様々な角度から問題点が浮かび上がり、場合によっては刑事事件に発展しうる要素も孕んでいます。現時点で明確な結論は出ていませんが、少なくとも当局が注視しているのは間違いなく、今後の展開次第ではサコイン自体のみならず日本の暗号資産業界全体に影響を与えるでしょう。

投資家・ユーザーの側も、今回の件から学べることは多いです。「法律の網をくぐった儲け話には要注意」というのはもちろん、「新しいテクノロジーだからといって無法地帯ではない」こと、そして「自己責任であっても詐欺的行為は許されない」ことを再認識させられました。今後、仮にサコインがプロジェクトとして立て直し健全に発展したとしても、今回露呈した問題を看過せず改善していくことが求められます。逆にプロジェクトが破綻すれば、法の厳しい追及を受ける可能性は高いでしょう。

私たちとしては、法律の視点も踏まえつつ冷静にこの騒動を見守るとともに、健全な暗号資産市場づくりへの議論を深めていくことが大切です。サコイン問題がきっかけとなって、日本の規制と市場がより良い方向へ進むことを期待したいと思います。

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